日本企業で働き始めたベトナム人スタッフが最初につまずくのが「報連相」です。報告・連絡・相談の頭文字をとったこの言葉は、日本の職場では新人研修の定番ですが、ベトナムの職場文化にはぴったり対応する概念がありません。

「まだ終わっていないこと」を言う習慣

日本側の上司がよく口にするのは「なぜ早く言わなかったのか」という言葉です。一方、ベトナム側のスタッフからは「まだ終わっていないので報告できなかった」という答えが返ってきます。

ここにある差は、能力でも責任感でもありません。何を報告に値する情報と考えるかの基準が違うだけです。

ベトナムの多くの職場では、担当者は任された仕事を自分で完結させ、結果を出して初めて上司に見せます。途中経過を細かく共有することは、裏を返せば「自分で判断できない人」と見られかねない。だからこそ、黙って仕上げようとします。

日本の職場はその逆です。途中で共有することが信頼の証になります。

「相談」がいちばん難しい

報告と連絡は、手順を決めれば比較的すぐ定着します。難しいのは相談です。

相談とは、答えが出ていない状態で上司の時間を使うことです。日本の職場ではこれが推奨されますが、年長者や上位者の時間を尊重する文化が強い環境では、「答えを持たずに人に聞く」こと自体に強い心理的な抵抗があります。

「わからない」と言えるようになるまでに、半年かかりました。

これは当社のあるメンバーの言葉です。半年は決して長すぎる時間ではありません。

仕組みで埋める

精神論で解決しようとすると、たいてい失敗します。私たちが実際に効果を感じたのは、次のような地味な仕組みです。

  • 報告の閾値を数字で決める。「予定より2時間遅れそうなら、その時点で言う」。主観的な「早めに」ではなく、具体的な基準にする。
  • 日報のテンプレートに「困っていること」欄を必ず置く。空欄で出してもよいが、欄があること自体が「書いてよい」という許可になる。
  • 上司の側が先に失敗を話す。相談しやすさは、上司が自分の見通しの甘さを口にしたかどうかでほぼ決まります。

文化の優劣ではない

注意したいのは、これを「日本式が正しい」という話にしないことです。ベトナム式の、任せたら最後まで任せる進め方には、意思決定が速く、担当者の当事者意識が育ちやすいという明確な長所があります。

違うのは前提であって、優劣ではありません。両方の前提を言葉にして共有できたチームが、結局いちばん速く動きます。