日本とベトナムの協業で、毎年もっとも確実にスケジュールを崩すのが正月休みです。両国とも一年で最大の休暇ですが、休みの構造が違うことがあまり共有されていません。

日付の決まり方が違う

日本の年末年始は太陽暦で固定です。官公庁の閉庁日は12月29日から1月3日まで。企業によって前後しますが、毎年ほぼ同じ時期に、ほぼ同じ長さで来ます。来年の計画を立てるとき、誰も日付を確認しません。確認する必要がないからです。

ベトナムのテト(旧正月)は太陰太陽暦です。毎年ずれます。1月下旬のこともあれば、2月中旬のこともある。日本側がテトの日程を把握していないまま納期を切ってしまうというのが、典型的な事故の起こり方です。

公式の休みと実際の不在は別物

もうひとつ、数字に表れにくい差があります。

日本の年末年始は、休み明けの立ち上がりが比較的速い。1月4日や5日に出社すれば、その日からほぼ通常の稼働に戻ります。

テトは違います。公式の休日は5日前後でも、多くの人が故郷に帰り、移動に片道1日かかることも珍しくありません。休み前の数日は帰省の準備で、休み明けの数日は挨拶まわりで、実質的な稼働は徐々にしか戻りません。カレンダー上の休みの長さと、実際に手が動かない期間の長さが一致しないのです。

これは怠慢ではなく、年に一度しか家族に会えない人が多いという社会構造の帰結です。

実務でどうするか

当社が実際にやっていることは、次の3点です。

  1. 年初にテトの日程を共有する。 1月ではなく、前年の秋のうちに。日本側が年度計画を立てる時期に合わせる。
  2. テト前後に納期を置かない。 前2週間と後2週間を「置かない期間」として、最初からスケジュール表に色をつけておく。後から調整するより、最初から空けるほうが安い。
  3. テト直前のリリースを禁止する。 障害が出たとき、対応できる人が国内にいない可能性が高い。リリースは休み明け2週目以降に倒す。

相手の休みを覚えておく

最後に、実務とは別の話をひとつ。

ベトナム側のメンバーに「よいテトを」と一言かけられる日本人マネージャーは、思いのほか少ない。逆にベトナム側から「よいお年を」と言われて嬉しくない日本人もいない。

相手の一年の区切りがいつなのかを覚えている、というのは、それだけで十分なメッセージになります。