日本のお盆とベトナムのVu Lan báo hiếu(ヴーラン報孝)は、別々の国の別々の行事に見えて、実は出典が同じです。どちらも『盂蘭盆経』、梵語のUllambanaを音写した「盂蘭盆」に由来します。

目連がはじまり

経典が伝えるのは、釈迦の弟子・目連(もくれん、ベトナム語ではMục Kiền Liên)の話です。神通力で亡き母を探すと、餓鬼道に落ちて苦しんでいた。救う方法を釈迦に問うと、旧暦七月十五日に僧たちへ供養せよと教えられた——これが両国の行事の共通の根です。

日本では推古天皇の時代から記録があり、宮中行事から民間へ広がりました。ベトナムでは仏教行事であると同時に、旧暦七月を「孤魂に施す月」とする民間信仰とも重なっています。

日付がずれているのは暦のせい

お盆は八月十三日から十六日が最も一般的です。ただし東京の一部や神奈川、静岡などでは七月十三日から十六日に行います。沖縄や奄美では今も旧暦で数えるため、年によって日付が動きます。

このばらつきは明治六年(1873年)の改暦が原因です。旧暦七月十五日をそのまま新暦七月十五日に読み替えた地域と、季節感を合わせて一か月遅らせた地域に分かれ、そのまま定着しました。

ヴーランはベトナムが旧暦を使い続けているので、今も旧暦七月十五日のままです。新暦では八月から九月のあいだを動きます。

胸につける花

ベトナムのヴーランには、日本にない習慣があります。寺で胸に薔薇を着ける「Bông hồng cài áo」です。母が存命なら赤い薔薇、亡くなっていれば白い薔薇を着けます。

古くからの伝統ではありません。僧侶ティック・ニャット・ハン(Thích Nhất Hạnh)が1962年に書いた同名の随筆から広まったものです。半世紀ほどでベトナム仏教の行事に定着しました。

働く場面で何が起きるか

お盆の時期、日本の会社は休みに入ります。ベトナム人社員にとってここで困るのは、帰省のタイミングが自分の家の行事と一か月ずれることです。

ヴーランに合わせて休みを取りたいと思っても、その週は日本側にとって何でもない平日です。理由を説明しようにも「旧暦のお盆です」では伝わりにくい。

同じ経典から来た同じ行事だと分かっていれば、話は早くなります。「日本のお盆にあたる日です」と一言添えられるからです。