日本のビジネス研修では、お辞儀を角度で教えます。ベトナムの職場にこの訓練はありません。だからといって敬意の表し方が無いわけではなく、乗せる形が違うだけです。

三つの角度

一般的に次のように教えられます。

  • 会釈 約15度 — 廊下ですれ違うとき、入退室のとき
  • 敬礼(普通礼) 約30度 — 客を迎えるとき、商談の始まりと終わり
  • 最敬礼 約45度 — 深い感謝、謝罪

角度より大事なのは、止めることと、同時にしゃべらないことです。「よろしくお願いいたします」と言い終えてから下げる。言いながら下げると軽く見えます。

握手と同時にやらない

外国人が戸惑うのが、握手とお辞儀が重なる場面です。両方を同時にやろうとすると、手も頭も中途半端になります。

相手が手を出したら握手に合わせ、軽く会釈を添える程度で十分です。日本側も、相手の国の作法に合わせて手を出す場面が増えています。

ベトナムの形

ベトナムの日常に、日本のようなお辞儀はありません。ビジネスの場では握手が基本です。

ただし敬意の作法はあります。子どもや若い人が目上の人に挨拶するとき、胸の前で腕を組む形(khoanh tay)を取ります。学校で教わる作法で、大人になると日常ではあまり見ませんが、親戚の集まりや正月の挨拶では今も使われます。

もう一つ、両手で渡す・両手で受け取る作法があります。年長者に物を手渡すとき、片手は失礼とされます。日本の名刺交換と同じ感覚です。

電話中のお辞儀

日本人が電話中に頭を下げるのを見て、ベトナム人は不思議がります。相手には見えないのに、なぜ下げるのか。

説明するなら、「敬意が身体の動作として習慣化しているから」です。意識してやっているわけではない、と言うと伝わります。

現場で困らないために

ベトナム人社員がお辞儀を浅くしても、敬意が足りないわけではありません。角度という尺度が母国に無いだけです。

逆に、日本人が握手を避けると冷たく見えることがあります。どちらも形を一つ覚えるだけで解けます。