正月に子どもへお金を渡す——日本のお年玉と、ベトナムのlì xì(リーシー)は、外から見れば同じ習慣です。実際に渡す場面に立つと、作法がかなり違います。

名前の由来

お年玉は、もとは金銭ではありませんでした。年神に供えた鏡餅を下げて分け与える「御歳魂(としだま)」が原型とされます。現金を包む形が一般に広まったのは戦後、高度経済成長期以降です。

lì xìは漢字で書けば「利市」。もともとは商売の縁起を担ぐ言葉で、広東語のlai seeと同系です。赤い封筒に入れるのはこの系統の習慣に共通します。

誰に渡すか

日本のお年玉は、基本的に子どもが受け取るものです。大人が大人に渡すことはまずありません。親族の子に渡すのが中心で、職場の同僚の子どもにまで広げることは普通しません。

ベトナムのlì xìはもっと広い。子どもはもちろんですが、年長者にも渡します。働いている大人が祖父母や両親に赤い封筒を渡すのは、ごく普通の光景です。健康と長寿を願う意味が入るからです。

この差は現場で誤解を生みます。ベトナム人社員が上司に赤い封筒を差し出して、日本人の上司が戸惑う——意図は敬意であって、何かの見返りを求めているわけではありません。

金額の感覚

日本では新札を用意するのが丁寧とされます。ポチ袋に入れ、表に相手の名前、裏に自分の名前を書きます。

ベトナムでも新札を好みますが、重視されるのは金額の大きさより封筒を渡す行為そのものです。少額を多くの人に配るほうが場に合っています。子ども一人ひとりに小さな封筒を配っていく形です。

その場で開けない

どちらの文化でも、もらったその場で封を開けるのは行儀が悪いとされます。ベトナムでは特に、金額を人前で確かめる行為が嫌われます。

子どもを連れて相手の家を訪ねるときは、この一点だけ先に教えておくと安心です。